いやー、ERIこの方大好きだったんですよ。きっかけはビグロ—監督のハリソン様主演「K-19」(2002年)っていう映画ですが、今回第82回アカデミー賞で、あの「アバター」のジェームズ・キャメロンを押えて女性初の監督賞を獲りました。
この二人、元夫婦だとかで、その夫婦対決ばかりが前面に出されますが、そんなんERIはどーでもいい。キャスリン・ビグロー作品の何がいいか、って。大概、彼女の作品は一見、「男っぽい」「骨っぽい」印象です。でも、実はそうじゃない。「本当の強さとは何か」を思い知らせてくれる内容なんですよ。
今回の「ハート・ロッカー」は、近くで上映されないもんですからまだ観てないんですが、私のお気に入りの「K-19」に限って言うと…あれはソ連海軍の原潜の話なんですが、ドンパチシーンは一個もない。放射能漏れした原潜で、それと闘った男たちの実話なんです。
旦那のキャメロン監督はヒットメーカーですが、エイリアンとかターミネーターとか、女が闘っちゃうのね。カッコいいけど、まあファンタジーです。強い、たってファンタジー。
対して、ビグロ—の作品は実話が多く、しかも武器を持っているのに「人と戦う」のではなく、倫理や人間の真髄と闘う、しかも否応なくそう言う場面に叩きこまれた男たちの土壇場の強さを描いているわけです。
ERIは、自分はジェンダーバイアスみたいなものをかなり払拭できてる方だと思っています。だからファンタジーの中での「強い女」にはそれほど魅力を感じない。現実はそんな都合良くないからね。でも、強いはずの男(腕力に限って言えば、男は大概の女よりも強いでしょう、そう言う意味)が、心理的プレッシャーにさらされると大体が女よりも弱い…その中で、本当に強い男って言うのはそれを何とか乗り越えちゃうんですよね。
エイリアンのリプリーはめっちゃ強いけど、あんな女性はなかなかいない。でも、実話で信じられないような物理的・心理的プレッシャーを乗り越えているのは、やっぱり男性が多いんです……そういう「本当の強さ」「本物のヒーローってのはどういうものか」を描くのがとても上手いんですね、ビグローて監督はね。
女(女ばかりでなく男も?)が憧れる人間てのは、ホントの強さを持った男です…逆境で頼れる男には、誰だってダメ出し出来ない。腕力が強くても、失業したり精神的ダメージを受けると心が折れてしまう男は、本当に強いって言えない。DVやっちゃうなんてのはもう最低。女が必要としているのは、逆境にあってもそれをしなやかにはね返してその上守るべきものを守ってくれる男でしょ?そんな男、いねーよなー、って思ってましたが、キャスリン・ビグロ—の映画を見ると、「ああ、本当に居るんだ、ヒーローっていうのが」と思えるんですね…。
つまり、彼女は骨太の男たちを描きながら、実はキャメロンよりも女性心理を押えている、と思うわけ。今までは、それがあまり理解されて来なかったけど、これできっと伝わるだろうなと思うと嬉しーです。
(ただまあ、逆境を生き延びて来た男が、その後円満な家庭を築けるのかと言うとそれは…また別の話かもな、って思うんだけどね…。だから、例えばヤマトのクルーたちなんかは、あの戦いの旅の後、とてもじゃないけど円満な家庭を築ける精神状態じゃなかろう、と言うのは何となく分かる。古代や島や真田さんは、そう言う強い男なんだろうけれども、家庭にしっぽり収まるとは本当は…思えないんだわ。ま、ヤマトクルーたちの結婚話なんてのは、それこそファンタジーだから、それはそれでかまいませんよね)
おっと、すいません。夢を壊すつもりはないっす。
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