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人の少ない時間に、格納庫に来るのは…この航海が始まって以来何度目になるだろう。
(…いい傾向じゃないってことくらい、わかってる……)
苛つきが収まらない時…、不安な時。
自分がここへ来て、ゼロの機体をメンテするのは——そんな時ばかりだ。
CT隊の連中もこの時間にはほとんどいない。整備ならもちろん、整備班が万全に行なってくれている……艦長代理の自分がここで出来ることと言ったら、愛機の機体をウエスで磨く、そんなことくらいだった。だが、無心にゼロの腹をこすっているとなぜか気分が落ち着いてくるのだから、不思議なものだ……
だが、ふと薄暗い格納庫内を見渡すと、——先客がいた。
(………島?)
航海長の島が格納庫にいる…、というのも、どちらかというとかなり珍しい光景だった。だが、今回地球から旅立って以来、古代はここで数回、島を見かけていた。しかも、例によって毎回、人の少ないこの時間帯に…である。
島は、ボトムのポケットに両手を突っ込んだまま、射出口に近い格納庫の壁に寄り掛かって立っていた。あいつももうじき非番明け、じゃなかったか…? 生活指導部みたいな石頭のくせして、睡眠時間削ってこんなとこで何やってんだ。
おい、冴えない顔してどうしたよ?
この艦長代理様の采配に対して憎まれ口を叩くあの優等生面に、からかい文句の一つも投げてやろうか……
だが、古代には島がそこでじっと佇んでいる理由が唐突に分かった。
顔を上げ、改めて辺りをぐるりと見渡す——
(ああ…そうか…。ここはお前が、最後にあの人を見た場所だった)
前の航海。…とはいえ、時間にして半年も経っていないが。
あの時。
…島とあの人は、自分と雪のように結ばれるとばかり思った。だがそれは自分の早とちりで、結果的に俺は…島を辛い目に遭わせちまった… あいつが辿った運命を、自分と雪に置き換えてみたら。それは想像するのすら辛いことだった。
あいつの身体の傷は治ったばかりだが、今回の任務も充分引き受けられると島自身が判断して、この航海に望んでいる。…だが、こう何度もここであいつを見かけると、少々心配にもなって来る。
——心はまだ、まったく治ってないんだな、……お前。
確かにこの場所で、テレサの幸せそうな笑顔を、俺も見た。…あの時彼女が立っていたのは……そう、あの辺りだった。
島が無言でじっと視線を注いでいるあたり。
今そこには、整備中のコスモタイガーllが2機駐機されているが、丁度あの辺だった。
薄暗い格納庫に、ぼんやりとあの青いドレスが浮かび上がるような気がして、古代も目を瞬いた……
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島の脳内ブロマイド。
そう書くとなんかコミカルなイメージするし、「おいおいイタいな」な印象もあるんですけど、実際は島、彼女の姿を記憶に残すヒマさえも、あまり無かったんじゃないでしょうか……(泣)。
後から、記録に残るテレサの姿を見たかも知れませんが(公式の通信に残ったのは、テレザートに到達した時にテレサがヤマト側の受信機に送った、祈ってる姿だけ じゃないかと思う。それと、例の「もう一度逢いたい」っていう音声記録)ふたりきりで逢っていたときの顔とかは、もしかしたらちゃんとは覚えていないかもしれません。舞い上がってたろうし。
ことに、最後に別れたときは、みんなが周囲にいて冷やかしてたから、見つめ合ってる場合じゃなかったかも……でも、島がにっこり微笑んでいるテレサを見たのは、多分、そのヤマトの格納庫でだけ、だったんじゃないでしょうか。
最後だと思ったからこそ、とびきりの笑顔で島を送り出したテレサ。
あああ健気……
あと一枚あります。
この下に載せる最後の一枚は、再会してからのもの、だと思うことにしましょ。
COMMENT
No Title
Re:No Title
島の脳内ブロマイドですからね〜(^^)
ぼんやりと記憶に残る程度なのかもしれませんしね。
ただただ美しい、っていうだけで良いんです♡