私んちの最寄り駅の、一つ向こうの駅の上空を
低高度で編隊組んだ自衛隊機がフライパスする、何機も何機も。
「観閲式」というと、その光景を思い出す。
そこの駅に、県庁所在地があるから…なのだったっけ?
どうしてこの辺の上空を通るのか、よくは知らない。
最近は、うるさい…と言われてるんだかなんだか、あんまり低空では飛ばないようだけど、何日も前から練習して同じコースを編隊組んで飛んで行くので「ああ、またこの季節か」と思うわけだ。
戦闘機は、嫌いじゃない。
一頃は、自衛隊の基地にしょっちゅう見学に行っていたくらいだから、
嫌いじゃない…どころか好き、だった。
音を聴くだけで、輸送機なのか戦闘機なのかの区別はつく。
姿が見えなくても機種を当てられるものだってある。
茨城県の百里基地へは何十回も行った。
基地の中へも何度も入っている。
当時の一線配備のF-4ファントムがスクランブル発進する関東の基地で、一番近いのがそこだったからだ。
朝霞や入間には、F-4やF-15は滅多に来なかった。
百里は滑走路のすぐそばを車道が通っているし、格納庫のすぐ裏まで通っている農道を知っていたのでいつもピクニック気分でそこまで車を入れていた。
いつでも間近にファントムやイーグルを見られる基地としては百里がダントツだった。
入間の基地祭にも何度か行っている。
厚木の米軍基地にも行ったっけなあ。
百里では滑走路に待機中のMU-2のコックピットに乗せてもらった。
本来、見学者を実機に乗せるのはNGなのらしいけど、もう20年以上前の出来事なので時効、ってことで。
私が、こんなに戦闘機フリークになってた理由は、何だったのか。
まあ、もちろん、マンガとかの影響もある……
「ファントム無頼」新谷かおる/が月刊サンデーだかに連載中、大好きで読んでいた…その影響。
けど、一番の理由は、当時のカレシが戦闘機だの軍艦だのが大好きだったから、なのだ。
だから、そういえば、横須賀へもよく行っていた。
建物の間から見える灰色のビルが、どう見てもゆっくり動いてる!!それを見て肝を潰していたら、岸壁近くをゆっくり航行している軍艦だった、なんてことも思い出す。
観閲式のときは、どの方角から朝霞へ向かって編隊が飛ぶのかを知っていて、
遠くからやってくる編隊をずっと追って写真が撮れる、上空に障害物の無い場所まで車を走らせた。
家から20分程度の、田舎の農道だ。
北の方から南へくだる色んな機種の編隊を、あちこちでカメラを抱えた人が撮影している。
当時、20年くらい前。
その場所で。
その光景を私が彼氏と見たのは、
軽トラックの、たくさん積んだ荷物の上から、だった。
その荷物って言うのは、私の家財道具。
晴れた日曜日だった。
私と彼氏は、私の荷物をタンスやベッドごと家から運び出して、
引っ越し先へ運ぶ前に、その農道へ車を走らせた。
観閲式だから、あそこで写真撮ろう。
ソレが終わったら、引っ越し先へ行こう。
彼氏にとっては、私の引っ越しより、観閲式の方が大事だったのかな、と
あのときも薄々分かってはいたのだが(笑)
私にとっては、彼氏を選んで家を捨てる、かなり重大な決心をした日だったんだけど。
おつきあいを私の親に反対されていたから、駆け落ち…じゃなくて、
彼氏の家のすぐ側にアパートを借りて、独りで暮らすことにした、その初日だった。
空を見ながら、ちょっと思った。
かっこいいけど、
乾いているな、って。
あれみんな、人殺しのための兵器だよなあ。
まあ、ああいうのがなかったら、有事の際に国を守るのは誰?って話だけど
有事、か。
……私にとっては、今日が有事なんだけどな。
どっか外国が攻めて来たら?
別にいいんじゃない……
一発で知らない間に死なせてくれるんなら、別に怒んないよ、なんて。
自分を守るためとか、誰かを守るためとか、国益とか国境とか外交手段とか……
なんか色々聞こえは良いけど、結局人殺しだよね?
ま、国家レベルでやるなら犯罪にはならない、っつか?
乾いているなあ、と。
親には無断で、親がいないのを見計らって、逃げるように家を出て来たその足で。
私はカメラを構えた彼氏と一緒に延々、上を眺めてた。
飛行編隊の爆音がひっきりなしに振ってくる、妙に高い秋の空。
大好きな彼氏が横にいたけど、
未来を感じるような気分にはあんまりなれなくて。
ただ、乾いていたなあ……と。
観閲式、と聞くと、
あの爆音を空に聞くと、
それだけが、思い出される。
(^^;)
[3回]
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