末っ子に、
良い先生に巡り会えると成績も上がるもんだ、という話をしていて
自分の中学時代を思い出した。
いやー。
私は中学時代が一番楽しかったので、
もしもタイムマシンで「戻っても良い」と言われたなら、
きっと中学1年生に戻ると思う(笑)。
英語を勉強するのが、楽しみでたまらなかった。
(小学3年生頃に勉強したいと母に頼んだのに、中学に上がれば学校でやるんだから、と取り合ってもらえなかったw)
部活動もやりたかった。
文化祭も楽しみだった。
委員会は放送委員にまっしぐら。放送室でマイクに向かってしゃべりたかったから。
でも、教師に期待はしていなかった。
小学時代の教員が、まあ見事に揃ってセクハラ野郎だったり率先して子どもをいじめる野郎だったりしたために、先生にはまーーーったく期待していなかった。
ところが…
中1の時の担任の先生が、すごい大当たりな先生だったのだ。
23歳の早稲田卒の新任教師で、本来の担任が突然産休に入ってしまったために臨時で赴任して来た理科の先生だった。
ほんのちょっと前まで学生だったからか、
とにかく面白いアニキという存在で、しかも教え方がものすごく上手かった。
授業が楽しい。分かる。一緒になって遊んでくれて、他の教科の補習もその先生がダントツに上手に教えてくれた。
山岳部だったとかで、「いつかある日」という山の歌を歌ってくれた。
俺は死ぬなら山で死にたい、などと、真顔で語るのをみんなで聞いた……
掃除をないがしろにする人間は、ロクなやつではない、というのが持論で、
掃除の時間はクラス全員にぞうきんを持たせ、一列に並ばせて
「おそーじおそーじおそーじよッ!!」と声を張り上げながら床ぶきをする。
もちろん担任が中央で、デカい声でエンドレスに音頭をとりながら、全員で何往復も教室を磨いた。
そのうち、他のクラスから「なんか面白いことやってるぞ」と見物に来るようになり
学校中がうちのクラスを見に来て、
お掃除音頭(いつの間にかそういう名前がついた)が大流行した。
お掃除音頭はともかくw、
よく歌を歌ってくれる先生だった。
慶応大学のカレッジソング「若き血」の替え歌は(早慶戦の時に、野次る目的で歌ってたのだそうだw)なぜか何度も歌ってくれたものだから、今でも覚えている。
(慶応出身の人ゴメンなさいw)
バカき血に燃ゆる者
狂気満てるヤツら
銀座の女にうつつをぬかし
ともに歩むその姿見るにあさまし
見よ低能の集うところワイセツの声高らかに
遮る雲無しを
テイノー テイノー
三田の色魔 テイノー
…………おいおいおい…笑
この歌、先生の美声のお陰でもちろん主旋律は完璧。
正しい曲も歌詞もちゃんとは知らないが、歌えと言われたら私も今でも歌える。
授業の時は、とにかく姿勢を正してまっすぐに手を挙げないと差してもらえない。
みんな、差してもらえるのが嬉しくて、そればかり競っていた(笑)。
テストの点数じゃなく、手を挙げる姿勢がまず第一、それから発言とその内容、それで俺は成績を決めるぞと言われていたから。
その代わり、先生も一人一人をとても良く見ていて、ただ仕事をこなしているだけのリーマン教師ではなかった。
私んちは私が小2のときから母子家庭だったが、
「お父さんが居なくて、嫌なこと言われたり、いじめられたりしないか?」とこっそり聞きにきてくれたのは、中3までの義務教育時代、その先生たった一人だけだった。
二学期の終わり。
本来の担任が産休明けで戻ってくると聞いた時、クラス全員がガッカリした。
俺は臨時教員だ。
本来の担任を、みんなが笑顔で迎えなくちゃいけない。
だから、笑ってさよならだ。
そういった先生のために、
クラスの歌、と決めていた「太陽の季節」(青い三角定規)を最後にみんなで歌ったが、
歌ってるうちに何人か泣き出して、だんだん歌ではなくなった。
私も例外じゃなくて、やっぱり途中でおいおい泣いてしまったのは言うまでもない…
その後、その先生は市内の別の中学に異動していかれたが
そこはあまり評判の宜しくない中学で、
風の噂に「生徒たちに疎まれて辞めた」と聞いた。
確かに、引っ張って行く力が独特で、モロに昭和の熱血先生、という感じだったから、ガラの悪い子たちにかかると「ウゼエ」ってことになっちゃったのかもしれない…
あのまま、うちの中学に居てくれたら、みんなが味方になったのに。
そう言って悔しがる子が沢山居た。
その後、同窓会も何度も開かれているが、その先生は一度も来てくれたことがない。
連絡先がわからない、というのだ。
疎まれて辞めた、その経緯がどんなものかは分からないが、
もしかしたら教員そのものを辞めてしまったんじゃないか。
そう思うと、残念で仕方ない。
今年、まだ健在でいらしたら、還暦を迎えるはずだ。
どこにおられて、どうして居るのか分からないけど
またお会いしてみたい、と思う……
お掃除音頭とテイノーの歌、今でも歌えますよ、と言ったら
ロクなこと覚えてねえな、って
笑ってくださるのだろうな…
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