たまにはマジメな話(でもないか)を。
もう随分絵を描いていないので、オマエがどのクチで言うんだ、って話ですが…
某ようこんさんちで出た話。
「カッコいい人体」を描くにはどうすればいいのか。
(^^;)
私も一時期やっていましたが、
(1)まずハダカで人物にポーズを取らせたものを描く
(2)それに服を着せる
(3)その上に、ある程度デッサンは無視した「カッコイイ」線を足して演出する
こういう方法。
えてして、(3)の工程に技術のレベルというか、才能と言うか、センスというか…が表れてしまうのですが、プロの描き手というのはやはりこの(3)の部分に「真似したい!」と思わせる魅力がありますね。
アマチュアの場合は、どんなに上手でも、ここが「真似の範疇を出ない」もしくは「センスがない(真似したいと思えない)」。
まあそれがアマチュアでしかない所以、なのですが(笑)。
この(1)〜(3)の技術を向上させるにはどうすればいいのか……って話であります。
[5回]
まず、絵を描くためには、
「見る」作業が必要です。
美術を専門にやった事のある人なら普通に学校でやる内容ですが、これが結構難しい。
学校では、画面をマスに区切ってその中に見たものを尺通り写し取る…という理屈で教えてたりしますよね。
(写真を拡大して模写する時なんかに使われる方法です)
が、そもそもそれも、本来あんまり使える方法とは思えません。
「見る作業」というのは感覚的なものなのに、出来ない人が多いので編み出された、苦肉の策、と言った方がいいです。
ちゃんとした「見方」が出来ていれば、極端な話、手で絵を描かなくても上達します。
(ウソじゃないよ!ちゃんと見てれば、例え手を怪我してて描けない期間があっても、衰えないしむしろ上達するよ〜)
けど、「見る」作業を怠る(もしくは、間違った見方をしている)と、絵はまるで上達しません。
これ、ホントに真実で。
手で描く作業は、目で見たものを確認するためにしているだけ、とも言えますね。
説明が難しいんですが、
ただ見る…というより、【見ようとしないと見えない】もの、それを見る能力を養う、ってことでしょうか。
そのために、学校でやってるのが「球体や三角錐」のデッサンなんですよね。
コレが出来ないのにいきなり人体なんて無理に決まってますから。
球体に見えるように描くためには、球体そのものにある陰影(光源の位置が分かる影)や実際は線ではない球体と背景の空間との境目をどう描くか、が分からないとダメだし、さらに床との接地面の陰影、床に光が反射して球体に映った床の陰影なんかも見えてないとダメです…(言葉では難しいよう)
絵の学校やなんかでやらされる、無駄とも思える球体やコーンの石工デッサンは
実はかなり無駄じゃないんですけど、つまんないのでホントにキライでした(笑)。
でも、理屈で他人に絵を教えようとする場合は、これしか方法がないんですもん、しょうがないよねえ。
結局そうやって、「見る」能力を養う、練習する、慣れるしかない。
その積み重ねが多ければ多いほど、なんだかんだ言ってレベルの高い絵になりますね。
そんなことなんもやってないけど描ける、という人は、もとから【見る能力】が優れてるんです。それを才能、って言うんでしょう。
さて、デッサンとは基礎です。
つまりお化粧で言うなら、ベースもしくはファンデーションです。
いわば、まだ白塗りのお面の段階。
なので、それを魅力的にするには、さらに
その上にメーキャップ、つまりアイシャドウやらチークやらリップやらを載せる。
デッサンにも同様に、そういう「演出」を乗せる必要があります。
それが出来て初めて、カッコイイ、カワイイ絵、になる。
ですが、それもやっぱり「カッコイイ絵を見る技術」が高いかどうか、でかなり違います。
なぬ?
意味が分からない?
んーー…。
どう説明したらいんじゃろか(^^;)
とにかく、上手な絵を描きたいと思うのなら、
「見る」ことです。
ほんとは、一から自分で見て、何度も描いて、慣れて、そんで上達して行くべきだとは思うんだけど、模写も近道ですよね。
「この人のこの絵がカッコいいから、真似して描きたい」でいい。
細部までよく見て、まずは模写。
最初は薄紙で写し絵を描く、も上達の近道です。
幼児のとき、これを沢山やった子は、早くにすごい絵を描けるようになってますよね(w)。
けど、ある程度大人なのなら、ただ写すだけだと「この線は何の線?」ってなっちゃいますから、そのためにリアル人体の作りが分かってないとダメかな(^^;)
マンガの絵は作家によってはメチャクチャなのでアニメの画の方が模写向きかも。線が少ないし、動かさなくちゃならない分、デッサンはしっかりしてるから。設定資料集の線画はお勧めですな。
けど、何を「見る」か、がここで一番大事なんですが……
もちろん、
例えばカッコイイ人体を描きたいのなら、上にあげた(1)〜(3)に対してそれぞれ「見る」作業が必要なんですが、
(1)では『本物の人体を観察する』=基本的な四肢の作り、繋がり、筋肉の付き方や各部の大きさの対比などを把握するように「見る」(例えば、肩から肘の長さ、肘から手首までの長さなど、人類だったら大体同じ比率、なものを記憶する。どんな角度からでも、どんなポーズをしても、長さを把握していれば変な絵になりません)
(2)では『服を着たときに出来る皺の寄り方、素材感を見る』。(例えば、腕が前に出ている時の、袖と背中の皺のより方はどんな服でも大体同じなんですが、セーターと学生服のように仕立ての違うものの場合は全然違います。服の仕立て方も「見る」ことで、皺の寄り方の法則を見つけられます)
ただしこれは、実物ではどうにもならない場合も。軍服とか、仕立てられ方なんて分かんないですしね、素材によって出る皺の違いとかも、実物見るわけに行かないですもんね。なので、ある程度(というかほぼ)想像です。その「想像」もセンスなんで、人気マンガやアニメの模写やっちゃった方が早かったりしますよねw
で、やっぱり(3)なんです、問題は。笑。
実は、正確なハダカを描いて、正確な皺の寄り方で服を着せても、
どうにもしっくり来ない事の方が多い。
そのために、(3)でデッサンにはおかまいなく、「カッコイイ線」を自分で作り出して乗せる。そのシーンに必要な動きを加える。速度を感じさせるために奥行きを出したり有り得ない遠近を入れるとか。柔らかさを感じさせるためにぼかすとか。間違っても、女性と男性の手や髪を、同じ質感で描いてはならん、これはまあ基本中の基本ですよね。そのために、ある程度元になったデッサンは無視、むしろデフォルメしてデッサンを壊すくらいでいい。
動きを加える、と簡単に言いますが、これはもう、ホントにセンスの問題なので、自分で考えたもの、もしくはカッコイイ絵の真似、模写でしか最初はやりようがないです。
「カッコ良さ、ステキさを盛ってある絵」を沢山見て、沢山真似して描くしかない(笑)。
それやってるうちに、だんだん見ないでも描けるようになって行くので、ある日「オリジナルで描けた」という日が運が良ければ来るでしょう。
人物がピンで、顔だけやバストアップのクローズアップなら意外とやりやすいんだけどね〜…。
けど、これが集団になるともうお手上げだったりします…(笑)
いわゆる「攻殻立ち」みたいな、設定資料とは違うんだけども体格の違う大勢の人を並べて描く、しかも全員ちゃんと同スケールのデッサンで、その上動き(演出)も入れて…となると、かなり高度です。
こういうのはもう、ひたすら練習しかない。
ショートカットはほぼないです(^^;)
ところがね……
ここで、自分の絵について恐ろしい事に気がつきました。
「カッコイイ」という感覚には、個人差があるわけですよ。
世の中でカッコイイ、と思われてる絵って、
例えば男なら長い指の手とか、ゴッツイけど男らしい手とか
なんかあるでしょ、そういう典型的な例が。
その流れから外れないもの、なんです。
時代の流行とも言えますか。
ところがさあ、ERIの『カッコイイ』って感覚は、
どうにもその、
典型的な流行とは違いまくってるんですよね………。
華奢な指の男なんて実はキライだし、かといってゴツイのもイヤ。
胸毛が生えてない男の裸なんて、全然エロくない。
腰が細すぎる男もキモチワルイ。
足が細くて長過ぎる男も、ガンダムかお前は重心高いとこにあるとコケルゾ、としか思わない…などなど……
けど、このERIの「カッコイイ」を絵にしたって、誰も喜んでくれなさそうだ。
なので、仕方なく一所懸命、カッコイイ絵の真似をして誤摩化しているだけ……になっている。
のでありますよ(^^;;;)
そう、「見る」作業を、ここで放棄してるんですね……私は。
だから、ある一定のライン以上は上達しない。そう自分で分かっている。
だって、自分がカッコいいって思うものって、典型的な例からは、ちょっと外れてるんですもん。
かといって、一から創造して描くなんてのもメンドクサイし……。
いっそ、松本零士センセのように、
自然体でカッコいいと思ってる男の絵は「おいどん」で、
女はそれこそデッサンなんて無視の「メーテル」、
無理してカッコ良くしてる典型的な例は「ハーロック」みたいな、他の誰も真似出来ないような創造の域まで行けたら素晴らしいだろうになんて思いますけどねえ……
(松本センセは、メカの絵を見れば分かりますけど、実物のデッサンなんて多分お構いなしですが、なのに超リアルさを感じさせますよね。錯覚を利用した正確性…というスゴ技を持っておられます。メーテルと鉄郎の身体の作りは正確なデッサンとはほど遠いのですが、あれはあれで独自の法則上で正確です。その上すごく魅力的なので、意見する余地がありません)
あそこまで頭抜けていると、もうデッサンなんて要らんとか思っちゃいますが、
でもあの方の絵は、「見る」作業の集大成とも言えますね…… 昆虫や植物の絵とか、メカの絵の細部とかは、「見る」能力がないとあそこまで演出して描くことはまず不可能です。
まあその域まで行けてりゃ、今頃すでにプロになってるだろうよアハハ、ってなもんでしょうが。笑。
話が逸れたw
とにかく、絵が上手くなりたいのなら、
「見る」ことが一番。
その次に、「演出」のセンスを磨くこと。
…… なんだけども、
エラそうに言ってる割にそこまで自分はやり込んでないしその気力もない…
しかも人によって「見えるもの」が違うので、なんちゅーのかなあ……
その、言葉では説明が難しいよなあ、等と
結局ゴニョゴニョ言って終らす、のでありました………(おい)
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COMMENT
ありがとうございます^^
この年齢で才能がないのを嘆いても仕方ないので、この際開き直って、せめてあからさまに変じゃない絵を描けるようにボチボチ頑張ります~^^♪
Re:ありがとうございます^^
えええ違う違う(笑)ようこんさんのためじゃないってばよ(^^;)
ようこんさんものすごく上手いじゃないですか!
逆に、こういう絵描きの理論みたいなもんを肴に議論して頂けたらなんて思うほど。
>一度見ただけのアニメの1シーンを記憶だけでどこまで再現できるか大会があったら、多分下位~~^^
あああ(^^;)そういうの、その気で見ればちょっとは描けるのかもだけど、その気がなくてダラ〜っと見てたものを描け!って言われたらまず描けないですよ〜〜(^^;)ムリムリ。
まあ、何をカッコイいと思うか、っていう自分の感じ方が万人受けするかしないか、っていうのが、結局一番デカイですよね〜〜。偶然努力せずにウケる絵が描けてりゃ、世話ないんだけどさ。笑。