「ヤマト2」の島大介の場合。
自分が知らない間に、大好きな人を亡くす…という体験をしています。
自分が知らない間に、何も出来ないうちに。
これって、かなり衝撃強いと思います……思いません?
実は私自身も今、母が慕っていた父の母(私の祖母)が去年の暮れに亡くなっているということを、母にいまだに知らせることが出来ないでいます。
認知症とはいえ、過去の記憶だけは鮮明な母に、どう伝えれば良いのか分からないからです。
母には、申し訳ないことをしていると思っていますが…
知らないままの方が幸せなのかもしれないと思うと、言い出すことが出来ません。
でも、それが本当に良いことなのかどうか?
それは、わからないままです。
この数年、旧作のヤマトシリーズで活躍された声優さんが相次いで鬼籍に入られ、
そのほとんどは闘病されていたという事実や亡くなられた日にちすら、すぐには私たちの耳には入って来ませんでした。
その都度、
「あの日、あの方は亡くなられたんだ」と思ってしまう度、
やりきれない思いに駆られることはなかったですか?
もちろん、直接会ったことも話したこともない声優さん達でしょうけれど、
ヤマトを通してであれば誰よりもよく知っていると、思えた方々でした。
実を言えば、
こんな風にメランコリックな考え方をするのは少々気恥ずかしいんです…。
だって、自分が同じ世界に入ってやっぱり分かったことは、
声優さんたちにとって、ヤマトはとても売れた作品だったには違いないですが、
出演した時間というのは収録のためのほんの数時間で、
私たちファンが思っているほど作品自体に思い入れはないんだ、という事実。
声優さん達にとっては、ヤマトも他の多くの作品の一つにすぎない。
声優さん達とファンとの温度差は、驚くほど大きい…って言うのは確かなのですから。
だとしても。
闘病されていたことも知らず
どれほど苦しい戦いをされていたのかも知らずに、
あとから「実はいついつに・・・」と訃報を聞かされたときの痛みは実に切ないものです…
もちろんね。
声優さんは古代君じゃない。
真田さんじゃないし、守さんでもない。
沖田艦長でもないです。
でも、
ヤマトが大好きだった、あの頃の自分に語りかけてくれていたのは、
あの方達の声でした。
だからこそ、知らない間に、いなくなってしまわれたことは、
あまりにも哀しい出来事だったんです。
ご病気は、仕方がないし、
年齢を重ねて行くことも止められることじゃないです。
亡くなられるのも、仕方がないこと…
でも、幸か不幸か私は、まだお元気なうちに彼の方の近くに行くことが出来ました。
この先、厳しい現実がもちろんあるのでしょうが(それは自分の母についてだって同じことで、…ですから、もちろん、ずっと張り付いていることも出来ないとは思いますが)知らない間に……ということだけは無いようにしたいと、思いました。
声優としてのあのお声にどれだけ夢を頂いたか。
富山さんにも、広川さんにも、青野さんにも、納谷さんにも、小林さんにも…
もちろん今まだご活躍しておられる方も含めて、
子ども時代を豊かにして頂いたという思いは、とても大きいです。
ですから、お伝えできる限りは、
その思いをお伝えして、励まして差し上げたいと思うのです。
もしも同じような思いをお伝えしたいと考える方がおられましたら。
拍手でも、直メールでも、ここへのコメントでも何でも。
エールをお伝えくださいという伝言があれば、お見舞いに伺う際、彼の方へお伝えします。
拍手にコメント頂いている方が既に何人かおられますので、
その皆さんの分もね… かならず。
私には、父がいませんでした。
7つの時に父母が離婚し、その後二十歳の時に父が病死するまで、
何度かしか会ったことがありませんでした。
母は、私が父と会うことを嫌いましたが、私は父が大好きでした。
その頃、テレビから、理想的なお父さん…を彷彿とさせる声がよく流れていました。
「草原の少女ローラ」のインガルスお父さん。
「ヤマト」の島大介。
「この木何の木気になる木」の日立のCMナレーション。
父とは似ても似つかない優しい声の人でしたが、
父の代わりにあのお声を聴いて私は育ったようなものでした。
思えば、ネットの海を、あの方を探してまわり
小さな手がかりを頼りにやっとお手紙を出せるようになった数年前。
私はとても焦っていました。
ご活躍を耳にしなくなり、どこのプロダクションにも所属されていないために
ご連絡先も分からず。
どうか私の知らない間に、いなくなったりしないで、と毎日祈るような気持ちで
過ごしていました。
ですが、結局… こうしてお近くに行くと言うことは
来るべき瞬間にも対峙しなくちゃならない、ということだったと
今更ながら気がついて。
私に、励まして差し上げて欲しいと伝えて来られたのは
あの方のケアマネージャーさんでした。
「ファンの皆さんの力は絶大です。
ご自分が必要とされているという気持ちは、何よりも励ましになりますから」と。
そんなに信用頂いているのかと、こちらが感謝するくらいです。
でも、私だけじゃないということも、お伝えしたい。
ヤマぷちで皆さんに書いて頂いた寄せ書きは、
あの方にとってきっと大きな励ましになるでしょう。
引き続き、何かエールをお送りしたい、と思われた場合は、ぜひ私に伝言してください。
必ずお伝えいたします。
……そして、私も皆さんにお伝えします。
お元気なのか、どんなご様子なのか。
知らない間に、…などということのないように。
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